電動バランサ ムーンリフタは2016年に発売を開始し、早7年の月日が経ちました。おかげさまで累計出荷台数は2500台を越え、現在も順調に伸び続けています。今や自他共に認めるユニパルスの看板商品です。
開発当時、世の中にはまだ電動バランサというものが存在しておらず、全くの手探りからのスタートでした。販売を重ねるごとに様々な業界のお客さまからたくさんのフィードバックをいただき、機能をさらに進化させ続け今日に至っております。
今回は、安全でタフ、細かいカスタマイズができて、簡単操作で安心して使用できる電動バランサ ムーンリフタに標準装備されている「無線技術」についてのお話しです。
ムーンリフタの手元コントローラは無線式です。スイッチを押せば当たり前のように反応して動きます。いつも当たり前のように使用できるということの陰には、様々な技術が詰まっています。
日常で何気なく使用している無線。実は、安全に関わる通信を行うためには数多くの技術的知見が必要です。
私のBluetoothヘッドホンは、通勤電車の中でしょっちゅう途切れます。もしムーンリフタの無線通信が同じようにブチブチと途切れたら、オペレータの意思に反してしょっちゅうフリーズするか、ボタンを押しても止まらないなど、使い物にならないでしょう。
ムーンリフタのような巻上機械のひとつにホイストがあります。無線式のホイストは、操作ボタンを押したときだけモータが動き、離せば止まるという仕掛けになっています。無線が途切れたら動作を止めれば安全は確保され、機能的にも特に問題にはなりません。ボタンを押しても無線が途切れていれば動かないだけで、「ちょっと反応が悪いな・・・」という感じになるかと思います。
一方、電動バランサのバランスモードでは、ワークの動きは常にフィードバックされています。オペレータがいつホールドボタンを押すか、常時監視しなければなりません。この時無線通信が途切れると、バランスモードからホールドモードへ移行させてワークをその場で止める必要があります。ですので、無線がしょっちゅう途切れるということは搬送中に度々モード切替のため作業が停止してしまうことを意味し、作業性を大きく損なうのです。
だからといって無線通信のエラーを無視すると、手元コントローラの状態とムーンリフタ本体の状態が食い違い、思わぬ不具合を引き起こしかねません。
安全性と作業性を両立させるためには、そもそも無線が途切れないようにしなければならないのです。
ユニパルスでは、従来より無線モジュールを開発しています。無線機の回路、アンテナ、ソフトウエア、プロトコルをトータルに最適化し、条件の厳しい電動バランサ用の無線通信方式を独自に開発し適用しています。
途切れない無線を実現するために重要なことは
私たちの周りには様々な電波が飛び交っていますが、現在最も多く使われているのは2.4 GHz帯です。電子レンジやWiFi、Bluetoothなど、多目的に使用することができる周波数帯です。
ひとつの空間をたくさんの無線機器が同時に共有しますので、どうしても電波が強い方に引きずられてしまい、電波が弱いほうの通信は途切れがちになります。工場内では無人搬送機など様々な機器が2.4 GHz帯を使用します。競合が多い2.4 GHz帯はムーンリフタの周波数としては適当ではありません。そのため、使用されることが少ない920 MHz帯を使用しています。
前述したとおり、無線通信における送信電力とアンテナの性能はとても重要です。とはいえ、送信可能な電力は総務省で決められており、規定より強い電波を出すことはできません。ムーンリフタは総務省の技術適合証明を受けており、20 mWという比較的大きな電力を送信することができます(日本では2.4 GHz帯は最大10 mW、Bluetooth規格は3 mW)。
ムーンリフタは本体をコントローラよりも上部に吊して使用しますので、アンテナは下向きに設計しています。下向きに電波を放射したほうが手元周辺の電波強度を高くすることができます。このアンテナはユニパルスオリジナルのもので、ムーンリフタに最適化されています。
送信アンテナから放射された電波は様々な方向に放射され、反射したり屈折したりしたのち受信アンテナに到達します。920 MHzの電波の波長は33 cm程度で、複数の電波の走ってきた距離の差が波長の1/2(約16 cm)周期で強くなったり弱くなったりします。
この現象をフェーディングといい、条件によっては電波の強さがほぼゼロになってしまいます。運が悪いと、この電波がゼロになる場所で毎回通信が途切れ止まってしまうという現象が発生します。この現象は携帯電話などでも同様に生じるため、携帯電話ネットワークでは基地局側にフェーディング対策が施されています。ムーンリフタは、携帯電話の基地局と同様の手法でフェーディング対策を行なっていますので、通信が途切れることはありません。
ムーンリフタが使用できる周波数は10チャンネルですが、最近は同一工場内で10台以上運用されているケースもあります。ですので、独自の多重化通信方式によって1つの周波数に最大8台のムーンリフタが通信できるようになっています。
つまり、電波が届く範囲で合計80台のムーンリフタを同時に運転することが可能です。
ユーザーの皆様にご利用いただいているムーンリフタの無線通信ですが、ユニパルス独自の技術により、途切れにくく実用的、かつ安全にご利用いただくための無線通信を実現しています。
当たり前のように無線で動くムーンリフタが、様々な隠れた技術の蓄積の上に成り立っていることをご理解いただければ、開発者としてとても嬉しく思います。
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< 導入事例 >株式会社寳角ギヤー 様 「天井が高くても使用できました!」
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< 導入事例 >パナソニックホームズ株式会社 様 「大きなワークでも操作できました」
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スパイラルケーブルと有線式のコントローラの組み合わせでは、可動範囲の限界までチェーンが上がりません。天井が低い現場では不便です。
また、本体の縦方向の短さもポイントです。天井の低い現場だと、数センチの差が作業性に響いてくることもあります。
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